門川大作市長インタビュー京都市長門川大作さん
あの人に聞く「真のワーク・ライフ・バランス」。
まず,この「真のワーク・ライフ・バランス」を京都市の重要な戦略の一つに掲げて推進している 門川大作京都市長に,ご自身の体験や取組にかける思いをお聞きしました。
門川大作さん インタビュー
― 「ワーク・ライフ・バランス」というと,まず「仕事と子育て」の両立が大きな課題として思い浮かびます。門川市長は,就任以来,「子どもを共に育む市民憲章」をはじめ,保育所待機児童ゼロの取組やこんにちは赤ちゃん事業など,次々と子育て支援策を打ち出しておられます。 市長は,4人のお子さんをお持ちですが,「イクメン」として,仕事と生活の両立に御苦労されたことや工夫をされていたことはありますか?
市長 我が家も共働きで,保育所の入所に苦労しました。長男の時は「昼間里親」の定員外での受け入れをお願いしたり,次男の時はどこの保育所にも入れなくて,保護者同士で「共同保育所」をつくったりもしました。2か所の保育所に,自転車で子どもを送っていた時期もありましたね。
大変な時期には,祖父母や地域の人にも支えていただきました。ありがたかったです。
こういった経験から,保育所・幼稚園や児童館等の充実,家族や地域のつながりの重要性を痛感してきました。
「ワーク・ライフ・バランス」と言ってはいますが,私は「仕事人間」で,子育ては妻にほとんど任せきり。反省してます。保育所の先生からは「もっと親子のふれ合いを」とお叱りを受け,意図的に時間を作り,短い時間でも絵本を読み聞かせたり,朝早く起きて公園に行ったり,自転車の乗り方を教えたりと努力もしました。ボーイスカウトにもご縁をいただき,親としても参加しましたね。今では懐かしい思い出です。
今はどうかと言いますと,近所に住む4歳の孫とお風呂に入ったのは2~3回。(年末には風邪をひかせて大失敗・・・。)絵本を読んだのは数回。これで「イクジイ」を名乗っているのです(笑)。率先垂範が大事と思っていますが,なかなか時間がつくれません(反省)。
― 門川市長ご自身が地域や保護者同士の助け合いの中で,子育てをしてこられたというとですが,地域で取り組む子育てについての市長としての思いをお教えください。
市長「ちちはは(父母)は子どもと共に生まれたり。育てねばならぬ子もちちははも。」
私の父がよく話してくれた言葉です。子育て経験の中で,親自身が学び,成長しなければと実感しました。その時,親同士,地域のおっちゃん,おばちゃんの経験や知恵が何よりも力になりました。現役の保護者を応援する仕組みづくりにも知恵を出し合いました。PTAや親同士の繋がりとして,「おやじの会」や私立幼稚園PTAのOBによる「はのんの会」ができました。「おやじの会」を作るときには,母子家庭が増える中,「おやじの会」を作ることに疑問を感じる人もいました。しかし,「だからこそ作ろう!我が子のおやじから地域のおやじになろう!」と一人の父親の発言。これが,「おやじの会」のスローガンになったのです。
市長就任後,市会の議論を経て「子どもを共に育む京都市民憲章」の条例化,保育所や放課後学び教室の新増設など子育て環境の充実に向けて懸命に努力しています。その中で,いつも感じることは京都のPTAや地域力は素晴らしい!すべては子どものためにと,まさに行動するPTA。地域の子どもの見守り活動には2万人もの方々が登録。皆さんのお話にいつも感激します。そして京都の地域力!地域のリーダーの皆さんの実行力に感動することもしばしばです。女性会の皆さんによる「温もりの電話」は,まさに“地域のおばちゃん”の復活です。全国的には地域の絆の希薄化等が言われていますが,京都はほんまに大したもんやと思います。
― 市長が京都の「地域力」に寄せる熱い期待が伝わってきますね。市長ご自身は,これまでにどのような地域活動にかかわってこられましたか?
市長 仕事人間で大半の地域の役は妻になってもらっていましたが,町内会長や自治会長,交通安全委員等は引き受けました。(本音は断り切れずに・・・失礼)。しかし,その時の経験や人とのつながりで学んだことが大変勉強になりました。今の私を作ってくれていると思います。
ボーイスカウトの運営にも20年来関わらせてもらっています。ありがたいことです。
― 市長は長年,学校や社寺,福祉施設の便所掃除を続けておられますね?
市長 18年前に「掃除に学ぶ会」のメンバーの方にお誘いいただいたのがきっかけです。土曜日の早朝に,ひたすらに便器に向き合い掃除をする。とても爽やかになります。便所磨きは心磨きだと実感しました。当初は,参加人数も10~20人程度で高齢の方が中心でしたが,最近は,子どもたちや学生さん,お父さんやお母さん,地域の方々もたくさん参加される。多いときには,200~300人になります。今でも毎回学ばせていただいています。
― 最後に,「真のワーク・ライフ・バランス」について,市長の思いをお願いします。
市長 「真のワーク・ライフ・バランス!」 この言葉は,もともと京都市のまちづくりの基本となる計画「はばたけ未来へ!京プラン」を策定するなかで,京都市にゆかりの深い若者「未来の担い手・若者会議 U35」の皆さんから提案されたのです。
「真の」とつけた点がすごいと思いました。生き生きと人間らしく働き,同時に家庭を大事にする,さらに,「地域貢献,社会貢献」をする。そのことが仕事にも家庭にも社会にも良い作用を及ぼす。ミーティングを開催したとき,大変熱く語られ感銘を受けました。
京都市では,若い人の提案を受けて,「はばたけ未来へ!京プラン」に「真のワーク・ライフ・バランス」を据え,熱い思いを受けて,「真のワーク・ライフ・バランス」推進計画をつくり,その実現に向けた施策を推進しています。
仕事と家庭だけでなく,地域活動や社会活動から得られた人とのご縁や経験。これは,仕事にも生き,人生を豊かにすると実感しています。
私も仕事最優先の人間でした。しかし,お誘いをいただいて取り組んだ地域活動やボランティア活動の中での経験は,私の財産になっています。感謝感謝です。
今後も,京都の強みである地域力,人間力を結集し,皆さんと一丸となって「真のワーク・ライフ・バランス」の実現を目指し,新しい時代を切り開いていきたい。同時に,私自身も決意を新たに,学び,実践していきたいと思います。